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【ビブリオエッセー】未来を予見? 今も新しい超短編 「ボッコちゃん」星新一(新潮文庫)

 50年ほど前、大学に入学した年に生協の書店で購入したのがこの一冊でした。 

 星新一は当時、筒井康隆らとともに、日本を代表するSFショートショートの作家でした。そのショートショート集『ボッコちゃん』の中に、「おーい でてこーい」という一編があります。あらすじはこうです。

 村のはずれにある小さな社が台風によるがけくずれで流され、その跡に直径1メートルぐらいの穴が現れた。穴の中は暗くどこまでも落ち込んでいくようだった。

 一人が「おーい、でてこーい」と叫んで石ころを投げこむが何の反響もなく、研究所の調査でも底は確認できず、埋めてしまうのが無難だとの結論に達した。地元の利権屋がこの穴に目をつけ、譲り受けてゴミを何でも引き受け、投げ入れる。しまいには処理に困った原子炉のカスなど汚染物質も捨てるようになるが穴は何でも飲み込み、埋まることはなかった。

 場面は変わり、ある建設現場で、ひとりの作業員が上空で「おーい、でてこーい」と叫ぶ声を聞く。見上げた空にはなにもなく、空耳かと思い仕事に戻るが、そのあと、小石が作業員のそばをかすめて落ちていった。

 話はここで終わりますが、後に続く悲劇を想像し戦慄を感じたことを覚えています。まだ宇宙創成のビッグバンやマルチバースの理論なども確立されておらず、ましてブラックホールの概念もおぼろげだった時代です。

 SF恐るべし。最近、ブラックホールを実際にとらえた写真を新聞で見て、この一編を思い出しました。

 千葉県印西市 中平光生69

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