PR

産経WEST 産経WEST

【一聞百見】AI、VR…科学で目指す争いのない世界 認知科学者、佐久間洋司さん(23)

支援を受ける「孫正義育英財団」の孫正義代表理事を前に活動報告する佐久間さん =平成30年12月(佐久間さん提供)
支援を受ける「孫正義育英財団」の孫正義代表理事を前に活動報告する佐久間さん =平成30年12月(佐久間さん提供)
その他の写真を見る(8/9枚)

■英知で世界にハーモニーを

 バーチャルな体験で人と人が入れ替わり、共感を呼び起こす「身体転移」のシステム。開発に取り組む佐久間さんは今、これと並行して、自分そっくりに動き回る「ドッペルゲンガー」を作る研究にも取り組んでいる。人工知能(AI)に自分らしいジェスチャーや癖を学習させ、3Dスキャンした自分のアバター(分身)にまとわせる。最終的には、自分が発する声に合わせ、分身が自分の意思とは全く無関係に動き、自分のような振る舞いができるように作り上げる。混乱、嫌悪、共感…。「自分とは別人格の『自分』に対峙(たいじ)したとき、人間にどんな意識の変化が生まれるのか、自分自身に共感することができるのか、検証したい」。このほか、インターネット空間に作った分身を使って動画配信を行う「バーチャルユーチューバー(Vチューバー)」を使った研究も進めている。すべての研究は、人間の意識に影響を与えるシステムを作り出すための試行錯誤だ。

 携帯電話などデジタル機器に囲まれて育った「デジタルネーティブ」世代。「スイッチを押せば電気がつく、蛇口をひねれば水が出るのと同じように、ネットにつながることが当たり前の感覚」と表現する。「20歳、30歳上の人から見たら、『それ普通やるか?』ということを、僕らは『まあやってみてもいいんじゃない?』と思える。そこにチャンスがある」。新しいものへの親和性の高さと寛容さこそが、独創的でチャレンジングなアイデアを生み出す原動力だ。

 独自研究のため、研究資金はすべて自己調達でまかなう。才能ある若手人材の支援を目的にソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が設立した「孫正義育英財団」の正財団生に認定されるなど、多忙な合間を縫って予算獲得のための書類提出やプレゼンテーション、講演活動をこなす。「『お、いいじゃん』と言ってくれる上の世代の方も多いけど、それでも『自然に反する』と感じている雰囲気はひしひしと伝わってきますね」。

 だが、同志や理解者は着実に増えつつある。最近では大阪市や関西財界とタッグを組み、科学やビジネスの分野のリーダーを育てる20代以下限定のサロンを主宰、代表を務める。「2030年の日本をつくるリーダーを輩出したい」

最新科学技術を使い「人を優しくする機械」の開発に取り組む佐久間洋司さん。「争いのない世界をつくりたい」とビジョンを語る =大阪市北区(渡辺恭晃撮影)
最新科学技術を使い「人を優しくする機械」の開発に取り組む佐久間洋司さん。「争いのない世界をつくりたい」とビジョンを語る =大阪市北区(渡辺恭晃撮影)
その他の写真を見る(9/9枚)

 たぐいまれなる行動力を支えるものとは-との問いに、佐久間さんは、影響を受けた2つの芸術作品を挙げた。SF作家の故伊藤計劃(けいかく)氏の小説と、アール・ヌーヴォーの代表的画家、アルフォンス・ミュシャの絵画だ。タイトルはいずれも「ハーモニー」。2つの作品から、「英知をもって人に影響を及ぼし、世界に調和をもたらす」という人生のビジョンを得た佐久間さんは、さらなる高みを目指す。「科学が人の意識に影響を与えるのだ、というイデオロギーを、広く世の中に押し広める人。そんな『イデオローグ』になりたい」

 想像を超えて他者の心を理解することは難しい。だが、23歳の挑戦が生み出すテクノロジーで、私たちがその壁を越える日は近いかもしれない。

     ◇

【プロフィル】佐久間洋司(さくま・ひろし) 平成8年、東京都生まれ。大阪大基礎工学部4年で、人工知能(AI)やバーチャルリアリティー(VR)など最先端科学で人の「意識」に働きかけるシステムの研究開発に取り組む認知科学者。1年から、知能ロボット学研究室の研究生として石黒浩・大阪大教授の指導を受ける。学生や若手研究者らでつくる日本最大級のAIコミュニティー「人工知能研究会/AIR」代表。大阪市や関西財界とともに科学やビジネスの分野の次世代のリーダーを育てるサロンも主宰、代表を務める。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ