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【エンタメよもやま話】新型AIがヒトの脳になる 米マイクロソフトが1000億円を投資した驚愕の事業とは

「汎用人工知能(AGI)」の本格開発で、ソフトバンク社の人型ロボット「Pepper(ペッパー)」も将来、より人間に近い考えや行動を起こすかも知れない…
「汎用人工知能(AGI)」の本格開発で、ソフトバンク社の人型ロボット「Pepper(ペッパー)」も将来、より人間に近い考えや行動を起こすかも知れない…

 今週ご紹介するエンターテインメントは、久々となるAI(人工知能)関連のお話です。

 2016年2月29日付の産経ニュースでの本コラム「グーグルも開発…子育て、老人の友、性欲ラブドール『AIロボットと結婚する時代!』英の学者に欧米が注目」でご紹介したように、欧米では約3年半前から、将来、AIを搭載したロボットは限りなく人間に近づき、友人や仲間になるだけでなく、人間に極めて近い進化を遂げたAIロボットと人間が結婚する例が出てくるとの見方が出始めていました。

 「そんなアホな~」と思った方も多いと思いますが、実はいま、欧米では、そんな未来が一気に現実化する計画が明らかになり、物議を醸しているのです。今回の本コラムでは、その計画などについて詳しく説明いたします。

◇   ◇

 このニュースに接し「ついに時代はここまで来たか」と驚いてしまいました。

 米宇宙開発ベンチャー、スペースXの創業者兼CEO(最高経営責任者)や米テスラのCEOをつとめる起業家イーロン・マスク氏(48)が2015年に設立したAI(人工知能)研究所「Open(オープン)AI」に、米IT(情報技術)大手のマイクロソフト社が10億ドル、日本円にして約1000億円を投資すると発表したのです。

 7月22日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)や米金融経済系通信社ブルームバーグ、翌23日付の英紙インディペンデント(電子版)など欧米の主要メディアが報じているのですが、この研究所が研究・開発に取り組んでいるのは、ただのAIではありません。いまのAIよりはるかに進んだ「汎用人工知能(Artificial General Intelligence=AGI)」の本格開発に取り組むのです。

 いまのAIと言えば、自宅の家電を操作したり、ネット通販で買い物できたりする米アマゾン・ドット・コムのスマートスピーカー「アマゾン・エコー」が搭載している「音声認識AI」が有名なのですが、「汎用人工知能(AGI)」は、人間の認知能力に匹敵する能力を誇り、あらゆる事柄や局面において、適切な対応や答えを導き出すのです。「アマゾン・エコー」などに搭載されている「音声認識AI」は、利用者が投げかけた問いかけや要求をデータとして蓄積し、それを基に適切な答えを導き出すわけですが、「汎用人工知能(AGI)」は過去の事例といったデータの蓄積に頼らず、人間のように自立的に物事を考えたり、先行きを推測したりするのです。

 米シリコンバレーの投資集団「Yコンビネーター」(2011年創業、従業員約100人)の共同創業者兼社長で、オープンAIのCEOに就任したサム・オルトマン氏はインディペンデント紙などに「AGIを作り出すことは、人類史上、最も重要な技術開発であるとともに、人類の足跡を形作る可能性を秘めている」と明言。そして「われわれの使命は、AGIの技術が全人類に利益をもたらすと保証することであり、マイクロソフトと協力し、AGIを作り上げるためのスーパーコンピューターの基盤構築を進めています」と述べました。

 今後、オープンAIとマイクロソフト社は協力し、コンピュータの機能やソフト、データなどをインターネットなどを通じて遠隔から利用するサービス「クラウドコンピューティング」の一つで、マイクロソフト社のサービス「アジュール」を用いて、AGIの開発と商業実用化を目指すといいます。約1000億円の投資は一度に行うわけではなく、10年以上にわたり分配して行うことになる見通しです。

 ちなみにマイクロソフト社は、今回の投資案件に関する広報資料でこう説明しています。「現代のAIのシステムは、上手く対処するよう訓練を受けた特定の問題では機能するが、今日の世界が直面する最も困難な問題のいくつかをAIのシステムを用いて解決するためには、AIの汎用化と複数のAI技術の熟達が必要である」

 「オープンAIとマイクロソフトのビジョンは、気候変動やより個別化された医療や教育といった地球規模の課題を含む解決困難な多くの分野の難題解決を支援するため、『汎用人工知能(AGI)』が人間が共に働けるようにすることである」

 ほとんどSF映画の世界なのですが、AGIの登場が現実味を帯びているのには理由があるのです。

 その理由の一つと言われているのが、オープンAIが作り出した新型のAI「オープンAIファイブ」が今年4月、「DOTA(ドータ)2」というオンライン型の戦略ビデオゲームの元世界チャンピオンを打ち負かしたことです。

 このビデオゲーム、プレーヤーが5対5に分れ、相手の基地を破壊するのですが、複雑な三次元環境のもと、味方のプレーヤーと協力しつつ、攻撃と防御のバランスを慎重に取りながらゲームを進めねばなりません。こうした他のプレーヤーとのチームワークが重視されるゲームは、従来のAIでは習得困難で、人間のチャンピオンに打ち勝つのは不可能でした。

 ところが「オープンAIファイブ」は、何度もゲームに参加することで、どの戦略が成功したかをまず学習。数カ月かけてその成功パターンを熟知し、4万5000年分に匹敵するゲーム経験と積み、元チャンピオンを打ち負かしたのです。

 これは、蓄積も集計もされておらず、何の手も加わっていない膨大な生のデータをコンピューターで計算する能力があったからこそ実現できた離れ業なのだといい、この技術をさらに進化させればAGIになるというわけです。

 とはいえ、ほとんどの専門家は、AGIは数十年後どころか、今世紀いっぱいかけても開発は無理だと考えており、オルトマン氏でさえ、オープンAIでも構築できないかも知れないと認めています。

 確かに「オープンAI」や英の人工知能開発企業「ディープマインド」(2010年設立、14年に米グーグルが買収)といった新興企業のおかげで、AIの性能は近年、大幅に向上しており、画像を認識したり、人が話した単語を識別したり、数年前には不可能だった正確さで他国の言語を翻訳できるシステムが登場しています。

 とはいえ、こうした成果は、AGIの登場が間近だったり、実現可能であるということを意味してはいません。それに「ドータ2」のようなビデオゲームと現実世界の複雑さは全く質が違っています。

 米シアトルにある有力研究機関で、マイクロソフトの共同創業者、故ポール・アレン氏が2013年設立した「アレン人工知能研究所」の最高責任者、オレン・エツィオーニ氏はニューヨーク・タイムズ紙に「われわれは、これまで以上にAGIの現実化に近づいてはいない」と断言。また、コンピューターサイエンス界のノーベル賞と呼ばれる「チューリング賞」を受賞した米グーグルの研究者、ジェフリー・ヒントン氏(71)も同じニューヨーク・タイムズ紙に「大きすぎる問題だし、AGIはわれわれに必要なのだろうか?」と疑問を呈しました。

 どうやら、まだ海のものとも山のものともいえない感じではありますが、開発競争は激化しています。2017年の時点で、既に全世界の約40の組織がAGIの研究開発に着手しているので、現在だとさらに多いとみられます。

 それだけに、今回のマイクロソフト社の巨額投資は衝撃的で、インディペンデント紙は「人間の脳を複製するイーロン・マスクのAIプロジェクトがマイクロソフトから10億ドルを受け取る」との見出しを掲げ、ニューヨーク・タイムズ紙は<オルトマン氏とオープンAIの研究者たちは、人間の脳と同じことができるAGIを構築したいと望んでいる>などと、その野心の大きさをリアルに報じています。

 AIに仕事を奪われるどころか、AGIを搭載したロボットに口喧嘩で「ボロ負け」して凹んだり、人生のパートナーに選ぶことで老後を楽しく過ごせる時代がやってくるのかも知れません…。     (岡田敏一)

 【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当を経て大阪文化部編集委員。ロック音楽とハリウッド映画の専門家、産経ニュース( https://www.sankei.com/ )で連載中。京都市在住。

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