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【ビブリオエッセー】父の不在と河童のミイラ 「あの家に暮らす四人の女」三浦しをん(中公文庫)

 「すぐ読めるよ」と友達が貸してくれた本です。あっという間に読み終えました。

 舞台は古い洋館。刺繍(ししゅう)作家の佐知と母親、鶴代の母娘が住んでいます。そこへ、ひょんなことから知り合った雪乃と雪乃の会社の後輩、多恵美が転がり込み、女性四人の共同生活が始まりました。

 ここに男性が一人。祖父の代から守衛小屋に住んでいる老人ですが、ほのぼのとした関係です。四人は自由に、楽しく暮らしています。会話のテンポもよく、うらやましい共同生活。物語にどんどん引き込まれていきます。

 佐知は父の顔を知らず、母の鶴代も多くを語らない。あるとき家を出て消息を絶ち、亡くなったらしいのです。

 洋館には一室だけ“開かずの間”がありました。このあたりから家族の謎が…と思わず身構えます。鶴代が外出の間に三人は意を決して中へ。古い霧箱を開けると…。

 「ぎゃあああああああ」。ちょっと大袈裟(おおげさ)ですが、この本、描写はコミカルです。中には生き物のような、不気味なものが…。鶴代が語るには夫、つまり佐知の父が「河童(かっぱ)のミイラ」だと言って残していったのでした。

 ホームドラマ的に進んできた物語が急転。話者がカラスになって家族の歴史を語り出す場面はおかしかった。この洋館にある晩、盗っ人が忍び込みます。目撃したのは佐知ひとり。危うし、佐知。そのとき、河童のミイラの目が光ります。その正体は?

 四人のその後が気になる夢のある物語でした。

 次は三浦さんの『仏果を得ず』を、今度はゆっくり読んでいるところです。

兵庫県西宮市 石田悠紀子82

【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

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