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【一聞百見】一主婦の華麗な転身 日本の伝統芸能を世界へ 芸術文化プロデューサー・西尾智子さん(68)

「あきらめずにアタックすれば奇跡は起きる」と話す西尾智子さん=大阪市北区(南雲都撮影)
「あきらめずにアタックすれば奇跡は起きる」と話す西尾智子さん=大阪市北区(南雲都撮影)
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■深く美しい能 多くの人に

 西尾さんはいま、日本の古典芸能、能に魅せられている。「こんな深くて美しい日本の芸術をもっと多くの人に知っていただきたくて。それがわたしの使命だと思っています」

 かつて、「能は辛気(しんき)くさい」と思っていた。「ただ思い込んでいたの。見たこともないのに」。華やかなバレエや宝塚歌劇が好きだった。あるとき、実玄祥さんがシテを勤めた「遊行柳(ゆぎょうやなぎ)」を見る機会があった。老体の柳の精が主人公の閑寂な趣の曲。動きの少ない、一見地味な能だ。それが西尾さんの心を打った。「とても清らかで、さわさわ、と柳の風に揺れる音が聞こえるようだった」と振り返る。終演後、楽屋を訪ね、実玄祥さんに「バレエと違ってお退屈でしたが、心にひっかかるものがありました」と伝えた。「多分、先生はあきれたと思うんです。でも同時に、はっきり物を言う裏表のない人間と思ったんじゃないでしょうか」

 実玄祥さんとの初仕事は新作能「伽羅沙(がらしゃ)」。戦国時代の悲劇の女性、細川ガラシャを主人公に音楽にパイプオルガンも加えた斬新な能で、平成9年に実玄祥さんによって初演。この作品に興味を持った西尾さんは「ぜひ関わりたい」と、自身のプロデュースで上演にこぎつける。「わたしのアイデアでソプラノ歌手を登場させ、賛美歌風の要素も加えてガラシャゆかりの大阪の教会で上演したのです。おかげさまで評判を呼びました」

 この仕事をきっかけに、二人三脚の旅が始まる。西尾さんは実玄祥さんを、宝塚歌劇やミュージカル、バレエ、劇団☆新感線などさまざまな舞台に連れ出した。刺激を受けた実玄祥さんは、さらに斬新なコラボレーションや新作能を創造していく。それが、世界的プリマ、マイヤ・プリセツカヤさんとの京都・上賀茂神社でのコラボや、大阪能楽会館で行われたパリ・オペラ座バレエ団のスター、マチュー・ガニオさんとの競演、そしてギリシャの野外劇場で上演された新作能「冥府行(めいふこう)-ネキア-」につながっていく。

 「先生も私も、新しいことをしたいという気持ちは共通していました。人間としての相性もよかったんだと思います」。実玄祥さんも「西尾さんは僕に新しい世界を見せてくれる。この人とならやっていけると思った」と全幅の信頼を置く。「こういう仕事をしていますといろんな困難がある。でも、わたしが心がけているのはいつも女性に好かれる女性であること。そして、他人の幸せを喜べる人間であること。それが女性が人生を歩んでいく秘訣(ひけつ)かもしれない」

 そんな西尾さんに、これからの夢を聞いた。「夢ってないのよね。いつも、いまがすべて。その積み重ねが明日につながると信じているの」

     ◇

【プロフィル】西尾智子(にしお・ともこ) 昭和26年、福井県敦賀市生まれ。57年、主婦のためのカルチャークラブ「アプレ・ミディ」を結成。63年にバレエ公演を初プロデュース。平成4(1992)年、芸術文化をプロデュースする有限会社「DANCE WEST」を設立。平成15年、きらめき賞(大阪市)、29年、京都府文化賞功労賞。

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