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【寅さん50年 男はつらいよを読む-吉村英夫】(16)参道から食卓が見える

 開けっ放しのとらやは柴又という地域共同体とつながっている。寅が柴又の人に出会っての挨拶は、「よう、えびす屋。しっかりかせげよ。どうしたい、相変わらずバカか」(第1作=主なロケ地・奈良市)など。こんなのが通用する隣近所は現代には存在しない。こまやかな人情が生きている街だから、寅が浮いたりせずに柴又に根づいていた。地域はハグレ者の寅を愛し、余剰人員を抱える余力をまだ持っていた。

 とらやも来る人を拒まなかった。誰もが出入り自由で、隣のタコ社長(太宰久雄)は、挨拶もなしにとらやの茶の間に座り込んで、わが物顔にお茶を飲む。社長の娘あけみ(美保純)も、やはりとらやでは無礼講。そんな関係性に違和感はなかった。

 寅ととらやは、高度成長に背を向けた存在であったが、それは同時に『男はつらいよ』が持つ「反時代性」の主張でもある。カネがあって便利であれば人間は幸福なのか、「向こう三軒両隣」の隣近所とは無縁なのが本当に気楽で自由なのか、と。

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