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【虎番疾風録第3章】(18)人気先行に苦悩、ドカベン涙の告白

 「外野なんてもうイヤだ」。阪神の岡田が米アリゾナ州テンピで、胸にたまった不満をぶちまけていたとき、日本でも南海の香川が18歳の胸を痛めていた。

 それは3月14日、巨人とのオープン戦が雨で中止となった大阪球場のベンチで起こった。「せっかく長嶋監督に会えると楽しみにしていたのになぁ。残念です」と香川は担当記者たちの質問に笑顔で答えていた。会見が終わり、記者たちがいなくなり、ベンチに筆者と二人っきりになった。すると、独り言のように香川が話し始めた。

 「なんで、みんなボクにヒットやホームランばっかり期待するんやろ。そんなにポンポン打てるもんやないのに…」

 それはプロ入りして初めて明かす“本音”だった。

 「打ちたいか?と聞かれたら、打ちたくないとは言えんもん。でも、それは希望や。いまのボクにはそんなことより、もっと大事な課題がある」

 入団して以来、香川の目標は変わっていない。練習についていける体を作ること-ただそれだけ。だが、周囲は一歩一歩じっくり野球に取り組もうとする彼の気持ちなど知ろうともしない。高校野球の人気者-ファンを呼べる。レコードも出た。ドカベン・シールも売り出された-だから、できるだけ1軍に置いておけ。

 「自分と違うもう一人のボクがいるんとちゃうか-と、この頃よく思うねん。ホンマのボクが偽者の後を必死になって追いかけてるみたいや」

 思いもよらぬ告白になにも声がかけられない。ただ、黙って聞いてやるしかなかった。

 「ホンマは1軍なんて考えとうないんや。もっと野球に打ち込んで、実力で1軍入りしたい。人気だけで1軍入りなんてご免や。マスコットにはなりたくない。なぁ、ボクの言うてること間違ってるかなぁ?」

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