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【最新電脳流行本事情】泣かせ、笑わせ、人生を語らせ…偉大なる「本」の猫たち

 『夜廻り猫』はどてらを着た謎の猫「遠藤平蔵」が「泣く子はいねが~」「泣いてる子はいねが~」と言いながら夜の町をうろつき、人間の「涙の匂い」をかぎつけては、家に押しかけて、悩みに耳を傾けるという8コマ漫画。

 各話のタイトルがシンプルながら心にしみるとともに、内容も日常の人間のさりげない行動や判断に、エールを送るという色彩が濃い。各話に挿入される一コマ漫画も秀逸だ。

 『犬と猫-』は笑いが止まらない。タイトルを読んで字のごとく、「犬くん」と「猫さま」を飼う作者の日常を描く。かまってもらうため、あらゆる策をめぐらす犬と、マイペースで厚かましい猫との対比が面白く、観察が鋭い。「やっぱり猫は、こうでなくては」と納得。小説によって決壊した涙のダムは、笑いによって傷口が拡大したのであった。

 ■タイトルとは裏腹に

 実をいうと『旅猫リポート』より、出現数が多かったが、書籍ではないということでランキングから外した「作品」がある。月刊誌『文芸春秋』6月号(5月10日発売)に掲載された作家の村上春樹さんの特別寄稿で、タイトルは「猫を棄てる」。ドキっとするタイトルだが、残酷な話ではない。

 同稿は村上さんが初めて家族のことを詳述したもので、父との思い出や、軍隊にいたことがある父の歩みを紹介している。タイトルの「猫を棄てる」体験は、村上さんが小学校の低学年時代の昭和30年代はじめの思い出として登場。父とともに海辺に猫を棄てに行くのだが…これ以上は触れないでおこう。

 父子関係はやがて絶縁に近い状態に陥るが、父の最期を前にぎこちないながらも「和解のようなこと」を行うところまで行き着いたとき、2人の共有体験として猫を棄てに行ったときの体験や見た景色を挙げる。さらに「もうひとつ子供時代の、猫にまつわる思い出」を通じて明かされる村上さんの人生観は深い。

 それにしても、人を癒やし、泣かせ、励まし、笑わせ、さらに人生までも語らせる「本」の中の猫たち。ニャンとも…なんとも偉大だなぁという境地にたどり着いたのだった。

     ◇

 【調査方法】5月中に発信された本の感想とおぼしきツイート約24万7千件の中から、「猫」「ねこ」「ネコ」という文字を含むツイート約2千件を抽出。投稿文中内に出現する書籍名をカウントした。

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