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【夜間中学はいま】(9)在日二世、笑顔で振り返る9年

 それからは懸命に働いた。パチンコ台の玉の補充、レンガを再利用する際に付着しているセメントの剥がし…。「親孝行したくて、いろんな仕事しました」

 二十歳で結婚し、3人の子供を育てた。PTAの役員を頼まれたときは、「『学校を出てないのが恥ずかしいからできません』とはいわれへん。『商売が忙しいから』と断りました」。

 暮らしにようやく余裕もできた頃、娘から夜間中学入学を勧められた。数年間迷い、71歳のときに再び校門をくぐる決心をした。

潮の満ち引き…母の記憶

 「年も年やから、ちゃんと勉強できるか心配でした。せやけど、先生がわかるように、やさしく教えてくれました」。夜間中学ならではで、教師は全員、梧桐さんより年下だ。

 授業は新鮮だった。

 「月が水を運ぶ」-。理科の授業で潮の満ち引きは月の引力によって起きると習った。「そういうもんなん?」と思いながら聞いていた。ある日、飼い犬の散歩コースである大和川の土手を歩いていると、河口付近で満潮の海水が逆流するのを目にする。「ああ、先生が話してたんは、このことなんやと実感しました」。あのときの驚きと感動は忘れられない。

 それは一つの記憶も呼び覚ます。大阪湾の近くに住んでいた子供の頃、母親が潮が引く時間を指で数えながら貝や小さな蟹を取りに行き、醤油漬けにして食べさせてくれた。「お母ちゃんは無学やったけど、ちゃんと潮の満ち引きを教えてくれてたんや」とうれしくなった。

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