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さよなら諏訪浴場…台風被害で廃業、常連客がお別れ会 大阪

女湯の「バンビ」のタイル絵が銭湯好きの間で人気を集めていた
女湯の「バンビ」のタイル絵が銭湯好きの間で人気を集めていた
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 愛らしい「バンビ」のタイル絵や女将(おかみ)のさりげない心遣いから「電車に乗ってでも来る価値がある」として銭湯ファンらに愛された大阪市城東区の諏訪浴場が、昨年の台風21号で被災し、突然の廃業に追い込まれた。取り壊しを余儀なくされてショックを受けた女将を励まそうと、閉店を惜しむ常連客らがお別れ会を開催。「諏訪浴場は私の誇りでした」と、女将も感謝している。(北村博子)

 木の鍵を差し込むげた箱の扉や注意書きの看板、「ゆ」と書かれたのれん。3月に行われたお別れ会には常連客ら約20人が集まり、取り壊し前に保管していた浴場の備品のチャリティーバザーが開かれた。企画者のひとり、平尾真一さん(45)は「みんなが大好きなお風呂でした」と力を込める。

 諏訪浴場は、女将の堀江寿美(ひさみ)さん(51)が切り盛りしてきた。昭和40年代に父の敬吉郎さんが既存の銭湯を借りて開業。もともと銭湯の多い地域だったが、家風呂の普及で廃業する店が相次ぐのを尻目に、常連客のためにと続けてきた。

 だが、敬吉郎さんは病が元で平成25年に他界。残された母、美江子さんのためにと堀江さんが家業を継いだものの、掃除や風呂たきは想像以上の重労働とあって、売り上げも落ち込んでいった。

 低料金を維持しながら経営を改善させるための手がかりが欲しくて、同業者や先輩たちの指導を受けつつ、客として銭湯を渡り歩いて研究した。

 近所のお年寄りたちは入浴チケットだけを握りしめて通って来るため、ボディークリームやタオルを無料でサービスした。ドライヤーは速乾性のある機能的なものに変えた。

 頑張りを目の当たりにして、協力する常連客も現れた。平尾さんら客仲間4人が「諏訪ーク(スワーク)」というチームを結成。音楽をかけて楽しみながらタイルの目地埋めを手伝ったり、堀江さんに代わって会員制交流サイト(SNS)で情報を発信したりした。電話やメールで堀江さんの悩みも聞いたという。

 「みんながめっちゃ応援してくれた。古さも隠したかったし、タイル絵も当たり前すぎて何も感じていなかったけれど、平尾さんたちがいいところをたくさん気づかせてくれた」

 建物は老朽化していたが大金をはたいて釜や配管、バーナーなどを新調。まもなく煙突の改修工事に取りかかろうとしていた。そんな矢先に昨年9月、台風21号が襲来。強風によって煙突が倒壊し、建物の梁(はり)も折れてしまった。

 「今でも現実だと思いたくない。私の居場所だったから」と堀江さん。けれども、常連客が企画してくれたお別れ会を「ただただ驚きで胸がいっぱい。こんなに惜しまれて、みなさんに喜んでもらっていたことを実感した」と振り返り、こう言って笑顔を見せた。

 「おかげさまでめいる気持ちがやわらぎ、前向きになれた。諏訪浴場はいまも私の誇りです」

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