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【ビブリオエッセー】言葉への思いは変わらない 「戦後史の中の英語と私」鳥飼玖美子(みすず書房) 

 著者に憧れて、同時通訳者をめざした若い頃があった。同時通訳養成の専攻コース試験に合格し、京都の国際会議場で通訳者専用ブースに入って訓練もした。一緒に勉強していたのはみんな英語の猛者ばかり。そんなある日、担当講師が「この仕事は自分をなくす仕事です。何か自分を持ち続けられる趣味でも持ってください」と言った。その途端、自分の気力と能力のなさに逃げ出し、中断してしまった苦い思い出がある。

 そこで目標を実用的な貿易実務に切り替え、1ドルが360円だったアメリカへの武者修行も敢行した。帰国後、英文タイプの仕事をしながら、まだまだ英語を使って何かの役に立ちたいという思いの最中、昭和40年代に、当たり前のようにお見合いをして結婚した。

 スーツのよく似合う夫は農家の長男だった。私には異文化に突入した感があったが自然相手の農家の日常に慣れていく自分がいた。そんな中でも若い頃に見た“夢”はくすぶっていた。しばらくして、薦められて小さな英語塾を開き、海外の人を受け入れるというボランティアも始め、30年余りが過ぎた。

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