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【夜間中学はいま】(5)戦災孤児 喜びの涙も覚えた

 長年働きづめだったが、読み書きが必要な事務仕事は避け、喫茶店や弁当店などでの職を探した。50歳を超えたある日、夜間中学を取り上げたテレビ番組を見た。年齢に関係なく学ぶ人たちの姿に、「私も人生を取り戻す」と心に決めた。あこがれ続け、あきらめかけていた「学校」に入学できたのは、定年を迎えた後の61歳のときだった。

定期券購入に30分

 「忘れられない日」という4月19日を今年も迎えた。ちょうど16年前、夜間中学に初めて足を踏み入れた日だ。ランドセルの代わりにリュックを背負い、毎日登校した。年をとれば覚えるのも時間がかかる。長女の澄江さん(54)は「時間があればチラシの裏に文字を書き、夜中まで取りつかれたように勉強する母の姿」を幾度も目にした。「負けん気の強い母です。本当につらい思いをしてきたんやろうな、と思いました」

 村上さんは、先生から日記を書くことを勧められた。最初の頃は「せっせと」を「せっいせと」と書く間違いや誤字、脱字などを赤ペンで直されることが多かったが、やがてほとんどなくなった。「ミミズが這ったような字」もすっかり上達し、「人に自分の思ったことを伝えられる楽しさ」も知った。

 今も鮮明に覚えている光景がある。初めて自分で定期券を購入したときのこと。申込書にゆっくりと鉛筆で記入したが、文字は枠内におさまらない。何枚も書き直し、30分かけて書き上げた。「その定期券で電車に乗ったときは、天下をとった気分でした」

 かつて流した「悔し涙はしょっぱかった」、文字を学び流した「うれし涙は甘かった」と村上さんは言う。

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