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【ビブリオエッセー】やさしさが花開くとき 「花さき山」斎藤隆介(岩崎書店)

 花さき山の花は なんでなんで咲くの

 これは、わが家の長女が幼稚園に通っていた頃、よく口ずさんでいた歌だ。聞けば幼稚園に「花さき山」という絵本があり、この歌も幼稚園で習ったらしい。

 ある日、長女を幼稚園に迎えに行った私はそこに置かれていた「花さき山」という絵本をパラパラッとめくり、引き込まれてしまった。長女は何度も読んでいるので、私自身のために、本屋さんに買いに行った。

 表紙は切り絵の女の子で、私たちにはなじみの滝平二郎さんの絵だが、少し怖いような感じがした。

 主人公は「あや」という十歳の村娘。山の奥へ迷い込んだとき山ンばに会い、足もとに咲いている不思議な花々の秘密を聞かせてもらう。花さき山に咲くその花は、ふもとに住む村の人間がやさしい事をひとつすると、ひとつ咲くのだという。

 あやの足もとにも赤い花が咲いていた。それは昨日、あやが咲かせた花だったことがわかる。妹のために自分が着物を買うのを我慢したとき、咲いた花だったのだ。

 本に描かれている花は色調もはっきりしていて、鮮やかだ。黒い色のページに白抜きの文字。ずっしりとした感じのこの本は、私の大切な一冊となった。

 自分の方が我慢して、少し損をしたような気持ちになることがある。でもそんなときはこう思うことにした。あ、いま、花さき山にひとつ花が咲いた。私の花は、どんな色だろう、と。

堺市南区 松尾とも子 62     

 【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

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