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【夕焼けエッセー】コンビニ弁当

 単身赴任中の私の昼食は、もっぱらコンビニ弁当だ。しかし、私はレジでお箸をもらわない。なぜなら、会社に箸を持参しているからだ。これは妻が持たせてくれた。味気ないコンビニ弁当でも、せめて箸だけでもちゃんとしたものを使って食べれば、おいしい食事をとっている感じがするのではと考えたからだ。そしてこの箸は、妻とおそろいだ。

 ある日の昼休み、いつものようにコンビニ弁当を食べ終え、お茶をいれようと思い給湯室に入ると、後輩が何かを探していた。

 「コンビニで、お箸をもらうのを忘れてしまって、割り箸か何かないかなと思いまして」。独身・独り暮らしの後輩もまた、昼食はコンビニ弁当だ。

 「俺の箸使う? 今洗うから」。私は流しで箸を洗い、後輩に差し出した。「先輩、自分のお箸でコンビニ弁当を食べているのですか?」。驚く後輩に私は妻が持たせてくれた話をした。「優しい奥様ですね。では、遠慮せずにお借りします」。私の箸を使って弁当を食べている後輩を見ていると、妻が言うようにそれはコンビニではなく、手作りの弁当を食べているようで、とてもおいしそうに見えた。

 数日後、後輩が私の席にきた。「先輩の“マイお箸”の話を彼女にしたら、彼女もすごく感動して、僕たちも買いました!」。後輩はカバンから箸箱を取りだして、うれしそうに私に見せた。「カバンの中で、お箸が“カラカラ”って鳴るでしょう。彼女がそばにいるようで、とっても幸せなんです」。後輩は箸箱を振りながら席に戻っていった。

 私はこっそりと、机の下のカバンを振ってみた。「がんばれ!」。妻の声が聞こえた。

松田良弘(43) 大阪府羽曳野市

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