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【夕焼けエッセー】革靴君、ゴメンヤデ

 現役生活に別れを告げて、はや12年。

 ふと靴箱に目をやると、主人(つまり、私)からの出勤要請もなく、居眠りどころか、いわば「完全な冬眠状態」でほこりをかぶったままの革靴たちが、私の視線に気がつき目覚めたかのようで、「履かないのなら、もう、いい加減に処分してくれたらええのに」と、ぼやいているような錯覚に襲われた。

 過去に私自身が購入したにもかかわらず、今はなぜか他人の所有物みたいな感覚に変化しており、「ヘエー、意外とおしゃれな靴ばかりやな」と自身の靴に妙に感心、いや、自己満足している始末。でも、退役したあと、「革靴を履くのは冠婚葬祭に出席するときだけで、普段は、いつもウオーキング時に履いている運動靴のみ」と決めていた。

 この方針に追い打ちをかけたのは、6年前の法事でのこと。当日はあいにくの雨天で、1キロメートルほど離れた会場まで徒歩で往復したところ、履いていた革靴に異変を感じたのはその帰り道。「右側の靴底が歩くたびに妙にブランブランしているな」。で、立ち止まり確認してみると、なんと靴底が完全に靴本体から分離し、かろうじて接着していた靴のつま先部分のみがつながっている状態。「革靴は履かないでしまっておくと、想像以上に劣化するで」って聞いたことはあったが、まさか私自身にその悲劇が降りかかるとは予期していなかった。

 この現象は、経年変化に伴う劣化なのか、日頃から革靴を利用しなくなったことに伴い、不具合な状態にあったことを確認できなかったことが原因なのかは不明であるが、靴底部分にクッションがあり、しかも滑りにくい運動靴を常時利用することは、齢を重ねた今、ささやかな「自衛手段」であると再認識した。

 山田定男(72) 大阪府岸和田市

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