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【夕焼けエッセー】雪のバレリーナ

 京都府最北端の街にあるわが家は、好むと好まざるとにかかわらず、冬は雪との闘いを覚悟しているのだが、この冬はどうしたことか、大雪警報が出ても寒気が海岸沿いを避けて通るらしく雪が積もらない。

 しかし記憶に残る38(さんぱち)豪雪は2月だったとか…。まだまだ油断は禁物か?と思いながら、はるか昔の雪の日をちょっぴり懐かしく思い出す。

 11月に長男を出産した私は、その当時育休制度がなく1月中旬から職場復帰した。2歳の長女もいて子育てと産休明けの勤務は相当ハード。しかもたびたび病気をする長男が心配だった。

 雪の降りしきるある日、買い忘れに気づいた私は、夕食後雪を踏みしめながらスーパーまで出かけた。長男のこと、仕事との両立のこと、加えて入院中の父のことなど次々と心配ごとが頭をよぎり、負の連鎖から私の心はまるで冬の空と同じく鉛色…。

 しかし“下を向いてたらあかん!”と思ったのか、帰り道四つ角の電柱の下で足を止め、ふっと見上げたそのとたん思いもかけない光景が私をとらえた。次から次に舞い降りる無数の雪たちが街灯の光の下で華麗に舞っている。まるでスポットライトを浴びたバレリーナたちが一心に踊っているよう。“わーきれい、ほんまにきれい!”と声をあげ、感動に包まれながらかなりの時間佇(たたず)みじっと雪たちを見上げていた。ややあって、鉛色の気持ちを立て直して雪道を跳ねるようにわが家に向かった。

 -あれから四十数年。今でも華麗に舞う雪を街灯の下で見上げるのが好き!

兵藤一子(72) 京都府京丹後市

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