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【倒れざる者~近畿大学創設者 世耕弘一伝・第2部】(15)「不正を働かないから強いのだ」隠退蔵物資の摘発で貫いた清廉

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世耕弘一氏が書いた「私の心境」(近畿大学所蔵)
世耕弘一氏が書いた「私の心境」(近畿大学所蔵)

 戦後のすさまじいインフレを克服するため世耕弘一は昭和22年2月、隠退蔵物資等処理委員会の全権委任の副委員長として、隠退蔵物資の摘発に乗り出した。旧陸海軍の解体後に所有権が曖昧になった物資が流出し、勝手に隠匿されるなどしていた。弘一は、これらを摘発して配給ルートに乗せることを目指した。

 ただ、戦後に不思議なのし上がり方をした実力者の資金源や「M資金」と呼ばれる都市伝説的な闇資金の原資になったとされるだけに命の危険が伴った。闇商人や悪徳官吏の抵抗もすさまじかったといわれる。

 この問題について弘一が書いた「私の心境」と題したパンフレットによると、物資の隠匿情報をもとに摘発に向かうと官吏が「今日は忙しい。明日来い」。翌日に現場に来てみれば、あったはずの倉庫が空だったことも度重なり、裏をかいて張り番をつけることで摘発したこともある。

 弘一の活躍は庶民の共感を呼んだが、摘発が続けば都合の悪い勢力が立ちふさがった。

 「謀略者どもにとっては、当時、政府機関として発足した隠退蔵物資等処理委員会なるものは厄介至極なものだった」

 作家の松本清張は、隠退蔵物資の問題を取り上げたノンフィクション「日本の黒い霧」で指摘し、結末をこう書いた。

 「この機関の末端は、いわゆる世耕指令書を不正に使う者も現れて、政治権力につながる謀略者たちがそれをいいきっかけにして遂に世耕弘一氏を罷免し、同処理委員会を解散させてしまった」

 4月、摘発指令書を偽造して詐欺を働いた事件が発覚し、無関係だった弘一が副委員長を解任された。その活動は2カ月にすぎないが、弘一は「私の心境」で「免職までの間に大體(だいたい)概算四十億見當(けんとう)にのぼる物資の摘発に関係した」と語る。

 詐欺事件への弘一の関与をにおわせるキャンペーンが新聞や雑誌で展開されたが、元近畿大学建学史料室長の當仲將宏(とうなか・まさひろ)は「隠匿された紙の摘発に手をつけたことで一部の新聞社や出版社の恨みを買ったのが原因といわれています」と説明する。

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