【虎番疾風録第2章】(27)明かされぬ「小津の魔法」
「とんでもない。きのうの夜と今朝8時に小津さんから電話が入り、“お会いしたい”というから会ったんだ。僕にとっては一生の問題だから、その点は間違ってくれるな」
一生の問題とは大袈裟(げさ)な…と記者たちは笑った。だが、考えてみれば“お墨付き”のあるなしや、どちらから電話を掛けたか-は大きな問題だ。
というより、こんな簡単にばれる“工作”をしてまでなぜ、小津社長は江川の巨人へのトレードを急いだのか。後年、タイガースの社長を辞したときも「オレがしゃべると球界がひっくり返るからな」と笑って口を閉ざした。
明かされぬ小津の魔法…と筆者もそう聞かされていた。ところが、大先輩の水本義政記者(元日刊スポーツ、現在はフリー)が生前、77歳になった小津から「もう話しても時効やろう」と事の顛末(てんまつ)を聞いたという。
=敬称略
(田所龍一)