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【石野伸子の読み直し浪花女】複眼のコスモポリタン陳舜臣(6)司馬遼太郎…日本と中国は宿命、隣人の心を書く

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 変則的な形をとることになるが、それほどウェイリーはアヘン戦争に興味をもったのだ。「西欧と東アジアとの劇的な邂逅(かいこう)という歴史的事件」に。

 「それならば、という気もちが、私に阿片戦争を書かせた」と陳舜臣はいう。

 アヘン戦争に関してみるべき作品がないとしたら、自分がそれを書いてやろう。ウェイリーは当時まだ健在だった。日本語の作品として世に出しておけば、いつかウェイリーの目にとまるかもしれない。彼が英訳したいという気持ちを抱くような作品を書こう。

 「そんな夢想をしていたので、執筆中にウェイリーの訃報に接したとき、しばし茫然(ぼうぜん)となった」という。

 東洋と西洋、日本と中国。陳舜臣の視野は常に広角だ。

 日本と中国との関係はややこしい。陳舜臣本人も、戦前は日本国籍、戦後は中華民国籍、日中の国交樹立後は中華人民共和国籍と移り、天安門事件で日本に帰化という経緯をたどった。歴史に翻弄された一人といえる。

 大阪外国語学校(現・大阪大学外国語学部)の同窓生、司馬遼太郎とは公私ともども親交が深いが、対談集「中国を考える」の冒頭にこんな言葉を置いている。

 「日本と中国とが隣人であるのは、与えられた宿命であり、どうしようもない関係である。それに背をむけるのは、どう考えても不自然としかいいようがない。隣人であることが宿命であるなら、より正しい、より深い理解をめざすのが自然であろう」

 膨大な著作にその思いが刻み込まれている。   =この項、終わり

     ◇

【プロフィル】石野伸子 産経新聞特別記者兼編集委員。生活面記者として長らく大阪の衣食住を取材。生活実感にもとづき自分の足と感性で発見したホンネコラムをつづるのを信条としている。

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