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【夕焼けエッセー】バス

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 傘を斜めに傾けバスはまだかまだかと探す。もう定刻より15分以上は待っている。だんだん寒くなりいらいらが増してきたとき、やっとバスが姿を見せた。

 ドアがあくと同時に、「事故のため大変おくれました。雨の中長らくお待たせしまして申し訳ありませんでした。すべりますのでお気を付けください」と運転手の声。

 事故なら仕方ないなあとやっと気持ちが落ち着く。降りるときも「ありがとうございました。長い間待たせまして申し訳ありませんでした」。一人一人に運転手が声をかけている。

 独り暮らしをしていた98歳の母が京都の介護付き老人施設に入居したので京都市バスに乗る機会が増えた。施設に入った初日、会いに行った日あいにくの雨だったが、運転手の誠意ある言葉を耳にした。

 それ以来週2回施設に通っているが、市バスに乗って不快な気分にさせられたことは一度もない。

 今日もバスの窓からながめているとつえをついた老人が待っているのが目に留まった。老人が乗られると同時に「席を譲っていただくようお願い致します」の運転手の声。さっと席から立ちあがる若い女性。老人が礼を言う前に「ご協力ありがとうございます」との運転手の声に乗客の様子をよく見ていられると感心した。

 バスを降りるとすぐ100歳の母が待つ施設。温かい気持ちになり自然に笑顔で「おはよう」とあいさつする。これが3年続いている。

中川良子(77) 大阪府枚方市

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