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【夕焼けエッセー】聞き手の分際

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 内輪の集まりや、ご近所の寄り合いなどで、積極的に話の輪に参加していくのが苦手である。隅のほうで、身を硬くして、かしこまり、気がつけば、ひと言も発言しないまま、会合がお開きになった、なんていうこともある。

 人生を半分以上も生きて尚、この調子だから、個人的な関わりでも、自然と聞き役に回ることが多い。自分の消極性が歯がゆくなるが、そうして聞き手に甘んじていると、知らずに人の心の奥の引き出しを開けてしまう、という体験がこれまで多かったことに驚く。

 偶然、隣り合わせた初対面のシニア女性に、はるか昔の新婚時代、子宝に恵まれないことで生じたしゅうとめさんとのいざこざを綿々と訴えられたことがある。体調不良で訪ねた漢方薬局店では、以後、行くたびに、女店主さんのプライベートな談話を拝聴していなければならなくなった。

 ある男性に、差し迫った内容の相談に乗っていただいたところ、いつのまにやら逆に、先方の内々の悩みや不安をひどく神妙な様子で打ち明けられていたという珍現象もあった。

 極めつきは、娘ほど年の離れた女の子と初めて電話したとき。なんとその子は、2時間余りのあいだ、ひたすら自分語りを続け、私のことには、ついにひと言もふれずじまいだったのである。あとで同輩の友人と笑い合ったものだが、このときばかりは、あっけにとられた。

 こんな自分の受け身な姿勢とバイタリティーの乏しさには、とうに愛想が尽きているけれど、歯切れのいいコメントもできず、関西人らしい気の利いた掛け合いすら、おぼつかない自分には、やっぱり、身を慎んで、聞き手に回るのが、ふさわしい分際のように思う。

 永田美咲(53) 自営業 大阪市東淀川区

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