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【平成という時代 アイドル社会学(3)】格差 「本気」と「部活」意識も二極化

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ファンたちと一緒に記念写真撮影に臨むアイドルたち。人気や集客力の格差は広がりつつある=滋賀県野洲市(鳥越瑞絵撮影)
ファンたちと一緒に記念写真撮影に臨むアイドルたち。人気や集客力の格差は広がりつつある=滋賀県野洲市(鳥越瑞絵撮影)

 ライブが始まる3時間も前から、会場周辺は熱気に包まれた。昨年11月、滋賀県野洲市で開かれた11組のアイドルが出演するイベント「SHIGA IDOL COLLECTION」。8回目となった今年は、少し様子が違っていた。人気の「AKB48 Team8」のメンバーが登場したのだ。

 主催するFM滋賀によると、約900枚のチケットは発売から数時間で完売。「毎回、7、800人程度ですが、今回は満席。チケットの完売も初めてのことです。やはりメジャーどころが出演するとなると違いますね」と鈴木仁・編成制作部事業グループリーダーは話す。

 ネットの普及などでアイドルも形態を変え、大量生産され、“戦国時代”を迎えた。だが、安定してファンを動員できるアイドルはそう多くはない。

 「市場に商品が増えると、大手が売り上げの大部分を得る法則がアイドル界にも当てはまる。成功するとも限らないし、もうからない」と国際大学グローバル・コミュニケーション・センター客員研究員の境真良氏。全体を10とすると、AKB48などの大手が8を占め、残りの2をその他が取り合う「二極化」が進む。その結果、解散するグループや、引退するメンバーも増えているという。

 「メンバーの多くは大学生や高校生。就職や進学などもあるし、安定した集客も難しい」

 大阪のアイドルグループ「Obento Idole(オベントイドール)」の所属事務所プロデューサー、石川ケンイチさんは吐露する。今年2月のグループ解散が決まったのだ。

 アイドルグループを作ろうとした約7年前は、AKB48や、ももいろクローバーZなどが大人気だった。「オーディションをすれば大量の応募があり、中学生もいました」。半面「部活動や習い事感覚の子も多かった」。メンバー間で意識の温度差が生じ、メンバーの入れ替えを繰り返すたび、集客力も低下した。「大手以外の事務所の経営は苦しい。今後も地盤沈下は続くのでは」と話す。

 昨年だけでも、オリコン首位の経験もある「PASSPO☆」や、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」の挿入歌を歌った「ベイビーレイズJAPAN」、声優ユニット「WakeUp,Girls!」など、一定の人気を集めてきた中堅アイドルグループが続々と解散を発表した。

 「アイドルには“年齢制限”がある。自分で区切りを付けていた」と冷静に振り返るのは、元地下アイドルで現在はIT通信会社「ネクスウェイ」に勤務する大沼里緒さん。グループは平成29年、約3年半の活動を経て解散した。「結果は残らなかったけれど、経験は自信になった」。平成27年、NMB48を“卒業”し、FMラジオ局「FM OH!」に勤務する河野早紀さんも、「アイドル活動は、目標ではなく通過点。いい青春でした」と振り返る。アイドル経験者は、案外過去には淡泊だ。それだけ厳しい現実を見てきたともいえる。

 昨年3月、愛媛県を拠点に活動する農業アイドル「愛の葉Girls」のメンバーだった少女が自殺した。所属会社のパワハラや過酷な労働環境で精神的に追い詰められたとして、遺族は松山地裁に提訴した。

 「アイドルが身近になっても、芸能界はベールに包まれ、一般人にはまだまだ分からない世界」。日本エンターテイナーライツ協会、河西邦剛弁護士は解説する。

 悪質な事務所の場合、契約書には、事務所を退所する際に法外な違約金を要求したり、退所後数年間は芸能活動をできなくしたりする条項が盛り込まれているという。「これが芸能界のルールだから」という“マジックワード”で押し切られるケースもあるという。

 26年にはAKB48のメンバーがファンに切りつけられる事件、28年にはアイドル活動をしていた女子大生がファンに刺され、一時重体となる事件もあった。

 警察庁によると、平成29年、全国の警察に寄せられたストーカー被害の相談は、前年比1.5%増の2万3079件で、統計がある12年以降で最多だった。

 河西弁護士は、「アイドルのSNSのアカウントを乗っ取り、書き込んだ内容をのぞき見るストーカー被害が出てきた」。確かに学校の課外活動や部活動の延長のように手を伸ばせば届くようになった現代のアイドル活動。しかし、格差やネット社会の裏面は深い。

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