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【夕焼けエッセー】母の愛を感じて

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 「お早うお帰り」母はそう言って毎朝送り出してくれた。とても心地よい響きで1日が始まる。

 結婚してからも、毎朝母へ電話をかけ、母の声を聞いて出勤していた。

 実家は10分ほどで行ける距離。ある朝母を驚かそうと、出勤前に電話をかけるのではなく、会いに行くことにした。静かに玄関を開け、そっと部屋をのぞくと、炬燵(こたつ)の上に電話の子機を行儀よく置き、その前に座って、電話が鳴るのをじっと待っていた。

 思いもかけないその姿に驚いた。きっとこの時間になると家事の手を休め待っていたのだろうと思うと、胸が熱くなり、毎朝必ず電話をかけなければと痛切に思った。

 あれから十数年、母は介護施設でお世話になることとなり、徐々に認知症も進み、私の名前も間違えることが増えた。いつも家に帰りたいと訴える母に、私が帰ると言いづらく、「ジュース買ってくるな」と、嘘をついて帰ろうとすると、「有難う。待ってるよ。気を付けて行きや」と。老いて寝たきりになっても私のことを思ってくれる母。正直に言わずに帰ることが申し訳なく、後ろ髪を引かれる思いでつらかった。

 母が逝くときは、1人寂しく逝かせない、ちゃんと看取って送りだそうと心に決め、施設の方々に私の気持ちを伝えた。その気持ちが通じ、母は私を待って旅立ってくれた。しかし、その時の私は、母の肩を何度も何度も揺すって呼び戻そうとしていた。

 ごめんね、お母さん。

 最後の最後まで、優しい母に感謝である。

貝田佐知子 (54) 大阪市大正区

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