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【夕焼けエッセー】ジーパン

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 近くで姉家族と住む母親のもとを、時々ご機嫌伺いに訪れる。母は数え卒寿で、足腰は弱り横になっていることが多いが、頭はまだシャープで、物覚えも良い方である。

 先日立ち寄った時、「ジーパンの後ろポケットの穴が前より大きくなっている。新しいのを買ってあげようか」と、私のジーパンをまじまじと見つめるのである。私は元来服装には無頓着な方で、後ろポケットの穴には何となく気付いていたが、気にも留めていなかった。「今流行りのわざと破れているジーパンなので、心配しないように」と言い訳したが、母は「そんなはずはない」とひかない。

 姉によると、母は1カ月ほど前にポケットの穴を見つけて以来、私が行く度に穴をチェックして、「また大きくなった。気になって仕方ない」とこぼしていたらしい。今回腹に据えかねて、遂に警告を発したようだ。

 卒寿になっても還暦の息子のことがまだ気になるのかと、こちらはいささか気恥ずかしいが、一方この年になって気にかけてもらえる親がいることはありがたいとも思う。もう少し長生きしてもらおうと、小さな親孝行のつもりで、次回は新調のジーパンで行くことにした。

今中康文 (60) 医師 大阪府東大阪市

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