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【午後のつぶやき 大崎善生】羽生さんのサイン道

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 サインはどうも苦手だ。ときどき求められることがあるのだが、どぎまぎしてしまう。本当はこちらがもらいたいくらいだと、いつも思う。サインは苦手だが、サイン会は楽しい。作家にとっては直接、読者と触れあえる数少ないチャンスである。

 2年ほど前、将棋の羽生善治さんと並んでサインをする機会があった。横でサインを続ける羽生さんに感心する。1人1人に必ず自分から手を差し出して握手をするのだ。将棋ファンがいたらサインをして握手、これが彼がひたすら30年間続けてきたことなのだと、傍目で見ながら感動した。私はもちろんかわいい子限定。「大崎さんはわかりやすいなあ」とかつてやはり並んでサインをした森信雄七段に笑われてしまった。

 ある日、羽生さんが小学生にサインを求められた。受けようとしたのだが、紙がなかったのか慌てて引きちぎったノートの切れはしのようなものを持ってきた。少考ののち羽生さんはそこに自分の名前と住所を書くよう指示した。少年がそれに従うと、後日羽生さんから色紙に認(したた)められた直筆サインが送られてきたという。それも七冠前後の、フィーバーの最中のエピソードである。私はこの話を聞いて身が引き締まる思いがした。

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