「北朝鮮がなくなることが世界平和に」脱北女性・金兌姫氏が講演
国を裏切った反逆者といわれ
結婚後、中国の警察が来るようになったため、私は夫とともに住まいを転々としたのですが、出産のために(夫の)実家に戻ったところ、警察が来ました。生まれたばかりの子供と一緒にいた私をあわれんだのか、警察は私ではなく夫を連行。私は子供を背負って親類の所へ身を隠したんですが、結局2002年に捕まり、国境警備隊に連行され、北朝鮮へ送還されました。
北朝鮮へ着いた瞬間、聞こえてきた言葉に耳を疑いました。「国を裏切った反逆者を撃ち殺したいが、銃弾がもったいない」と。私たちは小さい頃から、金日成(キム・イルソン=初代国家主席)は「父」で、金正日(キム・ジョンイル=金日成の長男、総書記)は「親愛なる指導者」と教わり、朝鮮労働党を「母」とたたえる歌も習いました。
(それなのに北朝鮮は)自らの体を売ってまでも親を助けようとした者を中国に捕まえさせ、私は「裏切り者」という烙印(らくいん)を押されたのです。一体、私たちは誰の“子供”なのでしょうか? 北朝鮮の貧しい人々はみな、親のない子供たちなのだ、と気付いた時、私は歯を食いしばり、もう一度中国に残した子供の所へ行こうと決心しました。
排泄(はいせつ)の自由もなく
とはいえ、それからは苦難の連続でした。保衛部(北の秘密警察組織)では全裸で身体検査を受け、立ったり座ったりする「ポンプ」と呼ばれる動作をさせられました。「女性は子宮にお金を隠している」という理由ですが、すでに私はその方法で300元を隠し持っていました。