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【午後のつぶやき】彼のいないパリには…

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 将棋のパリ支部長であった10歳下のフレデリックと私は、会えばけんかばかりだったが、どういうわけかうまがあった。好きな作家は谷崎潤一郎と三島由紀夫、もちろん仏語訳で読んでいる。「ヨシオはどうして三島みたいな小説を書かないのだ?」などと酔っていわれ頭を引っ叩(たた)いた。小津安二郎の頃の日本映画に心酔し、私は「東京物語」をはじめ小津映画はほとんどパリで観(み)た。小さなシネマで今も時々上映しているのだ。

 クラシック音楽への造詣(ぞうけい)も半端なく、ほとんど毎日、コンサートへ行っていた。メンデルスゾーンが足の速い犬の名前にしか思えないクラシック音痴の私は、彼の格好のおもちゃで、ショパンやモーツァルトのことから教えてくれたが、全く興味が湧かなかった。

 シベリア鉄道でユーラシア大陸を横断したとき。フレデリックとはパリで会い、バルセロナまで追ってきてくれた。その後マドリードへいき、深夜寝台でリスボンへ。50日もの旅が終わり、疲れ果てた私はしばらくフレデリックとリスボンで過ごした。旅の果ての街角で久しぶりに出合う「いわしの塩焼き」ばかり食べた気がする。それから2人でパリに戻り、ロワール地方で催されるフレデリックの妹の結婚式へ出かけた。大きな牧場を100人ほどで借り切り、思い思いの場所にテントを張り3日3晩のパーティーが続く。

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