産経WEST

【関西の力】ハイテク素材(4)世界を席巻したイザナミの糸 色つけられぬ“落ちこぼれ繊維”を逆手に

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【関西の力】
ハイテク素材(4)世界を席巻したイザナミの糸 色つけられぬ“落ちこぼれ繊維”を逆手に

釣り糸(右)などにしようされる東洋紡のスーパー繊維「イザナス」(中央) 釣り糸(右)などにしようされる東洋紡のスーパー繊維「イザナス」(中央)

 同業者からは「色をつけられない繊維など意味がない」と陰口もたたかれた。だが当時、東洋紡は石油危機後の不況で経営が悪化、新規事業の確立を迫られていた。

 強度を保ちながら素早く紡糸する製法を確立し、生産効率を従来の千倍に向上。何に使うか、検討の末たどり着いたのが海だった。染色が難しいのは水や薬品を寄せ付けないからで当然、海水にも強い。短所を長所に変えた。

 ダイニーマは88年に生産を開始。海外での販売はDSMが担当していたが、東洋紡も今春、本格的に海外展開することを決めた。4月、日本神話の「イザナギ」「イザナミ」にちなみ「イザナス」と改名した。

▼【関西の力】ハイテク素材(2)B787機の半分は東レの炭素繊維 米国抜いた大阪の技術

挫折を乗り越え

 東洋紡はスーパー繊維で挫折も経験している。直径1・5ミリで軽自動車1台をつり下げられるという「世界一の強度」を誇り、衝撃に強く、650度の熱でも燃えない繊維「ザイロン」をめぐる訴訟だ。

 2002年に米国でザイロンが素材の防弾チョッキを着た警察官が撃たれて負傷、03年に死者が出るなどした。遺族や米司法省などが東洋紡などに損害賠償を求める訴訟を起こした。

 約20件に上った訴訟で東洋紡は一貫して「素材に問題はない」と主張したが、長期化を避けるため、05年ごろから和解金支払いによる解決を選んだ。一部はまだ係争中だが、数十億円を支払うケースもあり、ブランドは傷ついた。しかし「素材はすばらしいものだ」と新たな用途を探り続けた。変形しにくく反発力が高い性質を生かして、卓球ラケットの内部やスノーボードなどに採用。卓球ラケットは福原愛選手ら五輪メダリストも愛用するほどだ。

続きを読む

このニュースの写真

  • ハイテク素材(4)世界を席巻したイザナミの糸 色つけられぬ“落ちこぼれ繊維”を逆手に
  • ハイテク素材(4)世界を席巻したイザナミの糸 色つけられぬ“落ちこぼれ繊維”を逆手に

「産経WEST」のランキング