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【夕焼けエッセー】スマホ 

Messenger

 スマホがどんなものなのか、俺はあまり知らない。そして知りたくもない。

 思わずバカ野郎と一喝し、一発パンチを、お見舞いしたくなった。しかし、思いとどまった。

 老人がすぐ切れる。そんなことが言われる今の世の中で、お前もそんな一人なのかとあかの他人に言われたくはないし思われたくもない。

 この間のことである。駅の階段を降りていると突然若者がスマホをしながら俺の前を横切った。「危ない」。よたよたとなりながら、なんとか踏みとどまったが、相手はそんなことなぞそしらぬ顔で、相変わらずスマホを見ながら前を歩いている。頭(とさか)に血が昇った。この野郎!! 思わず拳を握った。

 この年になると階段を昇るときより降りるときの方が困難で踏みはずして怪我(けが)をする。少し前だがゴルフバッグを2階から持って降りたとき、一つ階段を踏みはずしものの見事に転倒した。軽い怪我でよかったが以後降りるときには十分注意を払っている。それだけにこん奴には我慢ならない。一発お見舞いしたら、気分も多少良くなると思ったが、結果俺が悪者だと人は言うだろう。それ故我慢した。

 今、週に3回ボケ防止に始めたヘボ碁を打ちに電車に乗っている。車中や駅構内でスマホを見ている奴のなんと多いことか。唯(ただ)唯呆れる光景だ。車中での俺は窓際に立ち、車窓から流れ行く風景を憮然(ぶぜん)として眺めている。プライオリティーシート。侘(わび)しいセリフだ。

 嫌な時代になったものだ。苦々しく思う時代遅れの老人が、今、一人、ここにいる。

今西道男(81) 奈良市

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