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【夕焼けエッセー】つながる

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 親父が昨年の2月に亡くなった。都会の薄くなった親戚には、もう代替わりをしていることとあえて連絡しなかった。ところが一周忌を終えたある日、お供えが届いた。東京に住む親父の父方の従兄弟(いとこ)からである。

 息子として、お礼と生前の親父の様子を少しでも伝える機会があればよいかと思っていた。

 数カ月後、東京への出張が舞い込んだ。このときとばかり親父の遺品の中に彼の年賀状を探し当て、勇気を出して電話をかけた。

 「わざわざ来ていただかなくてもいいですよ」と受話器の向こうで、穏やかな声で何度も言われる。遠慮しておられるのか、迷惑なのか。ちらっと逡巡(しゅんじゅん)した次の瞬間であった。「嬉しくて涙が出てきました」。穏やかな声がいっそう優しくなった。

 地図を片手にたどり着いた東京で、彼と対面した。「お目にかかるのもお話しするのも初めてです」「お父さんによく似ていらっしゃる」

 初対面であるにもかかわらず、彼と私をして、従兄弟である私の父、伯父である私の祖父の血が脳裏を駆け巡ったように感じた。祖父や親父との70年越しの邂逅(かいこう)である。

 「子供の頃何度か遊びに行った父の故郷が懐かしいです」。彼の話も尽きなかった。

 血で会い、血で話す。血でつながるという意味の深さが、じんと胸に沁みた。訪ねてきて本当によかったと思った。

 「ぜひ、今度は、ご家族でルーツをお訪ねください」。心から告げた。

清水宗彦(61) 滋賀県近江八幡市

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