PR

産経WEST 産経WEST

【夕焼けエッセー】コーヒーの木 

Messenger

 「コーヒーの木」を初めて見たのは、25年前、結婚したばかりの夫と和歌山県を旅行中、たまたま入った喫茶店だった。お店の真ん中に、鉢に植えられて、天井に届きそうなほどの見事な木が立っている。この木にコーヒー豆がなるらしい。

 コーヒー豆の原産地は南のほうではなかったか。ブラジルとか、コロンビアとか。へえ、日本でも育つんだ、と軽い驚きを感じた。

 その後しばらくして、夫が5センチほどの「コーヒーの木」を買ってきてくれた。100円ショップで見つけたという。木というにはあまりに小さかったが、もしかしたら育つかもしれない。たくさん育って、海外のコーヒー農園のようになったら、コーヒー豆だって収穫できるかもしれない。私の夢は膨らんだ。

 ところが、すぐに枯れてしまう。室内で育てているとはいえ、山陰の冬は「コーヒーの木」には寒すぎるのかもしれない。冬が来るたびに枯れ、買いなおしては枯れ、水をやりすぎては枯れ、を繰り返した。そのうちに子供が生まれ、忙しい日々にその存在も忘れかけていたころ、冬を越しても枯れていないのに気が付いた。その後は、少しずつ少しずつ大きくなっていった。

 それから20年近くたち、今では私の肩の高さにまで成長した。そしてこの夏、小さな花芽を4つつけているのを発見した。初めての花だ。やった。収穫の日も近いかもしれない。といっても4粒だけだが。いつかこの木のコーヒー豆でコーヒーを淹(い)れて飲むことができたらどんなに素敵だろう。家にお客さんが来たら、いそいそとコーヒーをお出しして「このコーヒー、我が家でできた豆なんですよ」なんて自慢したりして。夢は膨らむ。

吉岡暁美(48) 松江市

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ