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【夕焼けエッセー 平成29年度年間賞選考経過】「感謝を伝えるおもちゃの電話」心動かされる優しさ

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【話題になった作品】「おばちゃんのブルース」内田賢二(71) 大阪府吹田市

 車を運転しているとラジオから落語家、笑福亭仁鶴さんが唄(うた)った「おばちゃんのブルース」が流れてきた。最初にこの歌の歌詞を聴いた時、まさに母の生きざまを唄っているように感じた。

 「わたしゃビルのお掃除おばちゃん…」

 母は戦後すぐに夫を亡くし乳飲み子の私を含めて姉、兄の3人の子供を育てた。

 家計を支えるためいろんな職業を経て、晩年は小さなビルの管理と掃除を任された。

 「モップかついで生きてゆく ひとり息子を自慢のたねに 毎日床をみがくのさ…」

 私は学生時代、母の職場で掃除を手伝ったことがある。私が持っても重たいモップを自由に扱い隅から隅まで丁寧に磨いていたことが脳裏に焼き付いている。

 出社してきた社員が、母に「おばちゃん、この子がおばちゃんの息子か? カッコええやん」と声を掛けてきた時の母の笑顔は今でも忘れられない。私のことを過大に自慢していたのだろう。

 「やがて息子は立派に育ち、今じゃ一流サラリーマン…」

 私は大学卒業後、当時は花形企業の大手総合商社に就職した。片親は立派な企業には就職できない、と近所の人に言われた時の涙はうれし涙に変わった。

 「だけど嫁さんもろうてからは息子は離れていったのさ…」

 私は就職後、福岡に赴任し母が亡くなるまで一緒に暮らすことがなかったが死ぬ間際に母に婚約者を見せたことが唯一の親孝行と思っている。

 「夕焼け空におばちゃんの顔きれいななアー」

 母の死に顔は本当にきれいだった。

     ◇

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