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【夕焼けエッセー】アズキときなこ

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【夕焼けエッセー】
アズキときなこ

 8年前の秋、私の母が亡くなり母の命日の4日後に産まれた雌のポメラニアンを飼い始めた。毛が焦げ茶色だったのでアズキと名付けた。アズキは人懐っこく可愛かった。飼うことを躊躇(ためら)っていた私に「僕が居るから大丈夫」と言った夫は2年前に逝き、「アズキに会いに帰るから」と言った娘は大学を卒業後に他県に嫁いだ。結局、私の側にはアズキしか居なくなった。

 犬を飼うという事は我が子を育てることと同じで大変だ。昨年末、私が入院した時は預かってもらったアズキのことが気になって仕方なかった。毎日のアズキの散歩は私の健康維持には欠かせなくなった。今では家で唯一の話し相手になってくれている。

 そんなアズキは今秋8歳になる。犬の一生の折り返し地点に居るということだ。この子の最期をきちんと看取るまでは元気で居なければいけないと思う。

 先日、ネットでアズキによく似たポメラニアンのぬいぐるみを見つけ購入した。毛の色が薄茶色なので名前を「きなこ」にした。アズキに見せるとクンクンと匂いを嗅ぎ、つかもうとする。私がきなこを抱いているとライバル登場と勘違いしたのか私に甘えてくる。

 確かにきなこは愛くるしい顔をしていて可愛い。でも、アズキを抱き体温を感じるとアズキへの愛らしさが湧いてくる。きなこはアズキが居なくなるまではベッドに置いておこう。今朝もアズキを連れて夫のお墓へ行った。夫もアズキを見てきっと喜んでいるに違いない。

田中直子 (66) 愛媛県伊予市

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