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【夕焼けエッセー】2年長生きすれば元がとれる

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 私の人生に大きな影響を与えた恩師、糸山先生の命日が近づくと先生の言葉を思い出す。

 父を亡くし姉、兄の3人の子供を育てるため母が1人で家計を支えていたので母の負担を軽くするため商業高校を選択した。

 3年の就職解禁日に先生に就職相談に行った。成績は比較的良かったので良い就職先を推薦してくれると期待したが、先生からの言葉は思ってもみないことだった。「君の就職の推薦はしない。進学しろ」だった。私は戸惑いつつ家庭事情を話したが先生はそれでも進学を強く勧めた。

 家族と相談の上、大学入試にチャレンジしたが商業高校のハンディーと受験勉強の遅れで入試に失敗した。入試失敗当日、先生を訪れ「どこでもいいから就職先を紹介してください」とお願いすると先生は「浪人して大学へ行け」と再び進学を勧めた。

 私は「病気で1年、浪人で1年、社会に出るのが2年遅れる」と言うと、先生は笑いながら「2年くらいどうってことはない。人が70歳まで生きたら君は72歳まで生きたら元がとれる」と言われた。

 私はその言葉に励まされ必死に受験勉強して憧(あこが)れの大学に入学した。卒業後は大手総合商社に就職し多少の紆余曲折(うよきょくせつ)はあったが素晴らしい人生を送ることができた。

 先生が入院したと聞き、お見舞いに行くと先生は「君には無茶な指導したなあ。今やったら問題やで」と言われた。翌日先生は黄泉(よみ)の世界へ旅立たれた。

 私も間もなく72歳。「先生、元がとれました」と報告したい。

内田 賢二(71) 大阪府吹田市

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