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【石野伸子の読み直し浪花女】竹林の隠者・富士正晴(2)大荒れに荒れ、解散論も

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 しかし、先の復刻版解説の中で中尾さんは、富士が実際に「幼年記」を読んだ時期と準備段階にはズレがあるのに、なぜ島尾とVIKING創刊を結びつけるのだろう、と疑問を呈している。富士はその後もしばしば「島尾のためにVIKINGを創刊した」という発言を繰り返している。

 それほど島尾の存在は大きかったということか。

 実際、創刊号に掲載された島尾の作品「単独旅行者」はたちまち中央の注目するところとなった。富士のかつての同人誌仲間、野間宏が高く評価し、中央の雑誌に掲載の運びとなり、文壇への足がかりをつかんだのだ。その後、庄野潤三や前田純敬ら有力メンバーも加わり、それぞれが中央から注目される存在となった。

 これらが同人誌にとってはひとつの試練となる。

 果たして同人誌は文壇への一里塚なのか。

 創刊号から半年でつまずいたVIKINGは1年近く休刊となる。それでもいったんは再刊でまとまり、昭和24年6月に再スタートした。その折には(1)同人は神戸出身に限る(2)有名になったものからクビにするーなどが決められた。しかし、これらは徹底しない。

 翌25年に島尾が「出孤島記」で第1回戦後文学賞を受賞したのを機に、先の申し合わせに基づき、島尾から富士正晴、庄野潤三、島尾敏雄の除名提案が出るが、富士は納得しないのだ。

 確かに名前のあがった人々は中央誌に作品発表を果たし、芥川賞候補になるなどしていた。が、富士に言わせれば「ジャーナリズムに2、3出ることが有名とはどうも分かりかねる」という次第で、雑誌継続こそ重要だったのだ。「有名になる」とはいったいどういうことか。富士にも当初、はっきりしたものはなかったのかもしれない。

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