PR

産経WEST 産経WEST

【夕焼けエッセー】36年ぶりの握手

Messenger

 36年前の小学校。卒業式を終えた教室で、27歳の女性担任が卒業生一人一人と握手をすると言い出した。私は何人かの同級生に握手をしないよう呼びかけた。特に理由はなかった。先生に対する反発があるわけでもなかった。ただ素直に言われる通りにしたくなかっただけのことだった。先生は、後ろに組んだ私の手を無理矢理つかんで握手をした。私は「やられた!」と叫び、そのまま水道へ走って手を洗うという行為に出た。12歳のやんちゃな少年のしたこととはいえ、今思い返しても失礼極まりない行いである。

 ふとした時に思い出すあの瞬間。そのたびに後悔の気持ちが生まれ、いつか先生に会ってお詫(わ)びをしよう。そしてもう一度きちんと握手をしよう。齢を重ねるたびにその思いが強くなり、自費出版した本を手土産に先生を捜すことにした。同級生に電話し、小学校や市の教育委員会にも問い合わせたが消息はつかめず、あきらめかけていた時に友人から「見つかった」との連絡。市役所に勤めている同級生が、職場で偶然にも先生の知人を見つけてくれたのである。そして36年ぶりの再会。握手の一件を詫びると先生は「そんなことがあったかしら? よく覚えていないの」と笑う。それが本心なのか、かつての悪童への思いやりなのかは知る由もない。が、晴れて和解?の握手をしたことで、次の目標ができた。「夏に同窓会を開くので来てもらえますか?」「いいですよ」。今度は同級生たちに過去のやんちゃを詫びよう。

和田勝(48) 学習塾経営 奈良県香芝市

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ