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迷える人に「人生図書館」 大阪・アメ村で女性会社員が運営 「自分の中に答えはある。本が問う」

寄贈された本を手に取りほほえむ館長の田中希代子さん=大阪市中央区
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 若者でにぎわう大阪・ミナミのアメリカ村に、女性会社員が仕事の傍ら運営する一風変わった図書館がある。名前は「人生図書館」。マンション一室の和室(15畳)の棚にずらりと並ぶ本は、全て寄贈本だ。闘病、失恋、身内の死-など、さまざまな悩みを抱えた人々が立ち寄り、思い思いの本を手に小休止できる空間となっている。(浜川太一)

一言添え寄贈

 「人間関係が希薄といわれる今の時代に、人と人が心を通わせられる場所を作りたかったんです」

 こう話すのは、館長の田中希代子さん(56)。8年前、勤務先のボルト製造会社「丸ヱム製作所」(大阪市中央区)が所有し、自身が仕事で管理運営を担当する貸しビルの一室を、人々の交流場所にしたいと発案。同社から無償貸与を受ける形で平成22年6月、「人生図書館」と命名してオープンした。

 本を介した人々のつながりを作ろうと、友人らに「人生の一冊」にメッセージを添えて寄贈してほしいと依頼。最初は20冊だったが口コミで集まり、現在は185冊が並ぶ。田中さんは図書館が入るビルの一室で本業の仕事をこなしながら、1人で運営。多くはないが、人足が途絶えたことはない。

印象に残る来館者

 「来館者は『人生』という言葉に何かを感じ取って来るが、それはハッピーでない意味の場合が多い」と田中さん。これまで出会った来館者は転職を考える会社員や失恋した人などさまざまだが、特に印象に残るのが、開館翌年の23年8月に訪れた「まきさん」という30代後半の女性だ。がん治療を終え、看護師として職場復帰を控えていた。

 まきさんが手に取ったのは、精神科医、神谷美恵子さんの著書『生きがいについて』(みすず書房)。ハンセン病患者に寄り添い、生の意味を真摯に考えた名著だ。寄贈者は、田中さんの親友でアナウンサーとしても活躍する京都・正念寺の女性僧侶、川村妙慶さん(53)。同館に寄贈された最初の一冊だった。20代のころ、この本を読んでいたというまきさんは「看護師として自分は今まで患者さんに対し、どこか上から目線だった。自身ががんを患って、初めて気づきました」と話したという。

本に救い求め 「人は見えない縁でつながっている」

 その2年後。まきさんの母親が来館し、田中さんはまきさんの死を知った。母親は娘の日記から図書館の存在を知り、足跡をたどってきたのだという。「お母さんの安心した様子に胸がいっぱいでした。人生図書館を開いていて、本当に良かったと感じた」と田中さん。川村さんも「私が女性僧侶として生きる決意をした一冊。本に救いを求めていたのは私も同じで、人は見えない縁でつながっていると感じた」と話した。

 「近頃は、自分のやりたいことが見つからず、答えやノウハウを求めて来館する若い人が多い」と田中さん。だが、「答えは必ず自分の中に見つかる。いい本は自分の胸に問いを投げかけてくれるから。私は、そんな本と人との仲介役でありたい」と話した。

 「人生図書館」は、平日午前9時~午後6時開館。利用は閲覧のみ、無料。本の寄贈も受け付けている。問い合わせは同館(電)06・6281・0555。

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