PR

産経WEST 産経WEST

【夕焼けエッセー】いよっ!四代目

Messenger

 「生まれたよ、男の子が!」。突然、娘からの慌ただしい電話。こちらは一瞬絶句、やったぞ、曽孫だ。紛れもなく私の血を引く4代目の誕生だ。すっかり気持ちが高ぶって、その夜はなかなか寝付けなかった。

 長年、スポーツで鍛えた体だ、まだまだそこらの中高年に負けるもんか! その自信がぐらつきだしたのは、80歳を超した頃からだった。何キロも歩いていないのに、途中から足が重くなり、しばらく休んでまた歩き出す。急坂では息が切れ、下り階段では膝が痛む。それまではなかったことだ。以前からの願望である「悠然と闊(かっ)歩(ぽ)されてる卒寿翁」はかなわぬ夢に終わりそうだ。今後は身の程をわきまえ、周囲に迷惑を掛けぬよう気配りをして、一日一日を大事に過ごそう。男性の平均寿命は80歳とか。どうせ短い余生なら、毎日を笑って過ごしたい、そして死期が迫ったら、素直に受け入れよう、葬儀も簡素にしたい等々、悟り切ったつもりだったが、大変なことになったぞ、こうしちゃいられない。折角授かった命だ、もう一仕事やり遂げてから終わろう。4代目が物心つくまで、何としても生き抜いて、戦前戦後を生きて来た先輩として、人生の指針を伝えたい。気力を振り絞って「のんびり翁」から「しっかり翁」へかじを切り、どんと性根を据えて、さあ、もう一仕事だ。

 今、私の部屋には一枚の彼の写真が置いてある。豪快に笑っている顔だ。毎朝夕、話し掛けて、こちらも元気をもらっている。

江口 節信 (92) 大阪府豊中市

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ