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【夕焼けエッセー】おばちゃんのおむすび

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 「ほんま、あの子は根性が足りんのやって」

 「ほやって、親が甘いんやでぇ、どもならんの」

 結婚が決まり引っ越しの荷造りをする私を手伝うために来てくれた伯母ふたり。

 大阪在住歴のほうが長いのにいまだに抜けない福井訛(なま)りで、身内の悪口を言い続けている。

 「おばちゃん達! 人の悪口ばかり言うんやったら、もう帰って!」

 我慢しきれず、つい声を荒らげた私に伯母達は慌てて退散したが、私はプリプリしたまま夜中までかかって荷造りを終え、そして迎えた出発の朝。

 「ピンポーン」

 引っ越し業者かと迎えに出た玄関には、昨日の“悪口妖怪”のひとりが立っていた。

 手には大きな飯切(はんぎ)り。

 「今日は忙しいて、ゆっくりご飯食べる暇もないやろ思て…。旦那さんになる人と、一緒に食べや」。それだけ言い終えると、痛む足をかばいながら伯母は去っていった。

 飯切りの中には作りたてのおむすびがずらり。

 海苔やとろろ昆布を巻いたもの、青(あお)紫(じ)蘇(そ)やゴマをまぶしたものからはふわりとよい香り。

 昨日、生意気にも年長者を怒鳴りつけた気まずさと、すぐにありがとうが言えない自分が情けなく、飯切りを抱えたまま玄関に突っ立っている私のそばに弟がやってきた。

 

 「ふ~ん、おばちゃん、おねえの為に自分ができる精一杯の事をやってくれたんやな」

 まだほんのり温かいおむすびをひとつ頬張(ほおば)った。

 目の奥がじわりと熱くなり、鼻の奥がツンとする。

 あれ? おばちゃん、今日のおむすび、塩加減間違えたんかな? なんだかやけにしょっぱいな。

 かれこれ、20年も前の話です。

出口 由美子(46) 名古屋市緑区

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