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【夕焼けエッセー】グリコ

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 桜の花が咲く頃になると、毎年必ず思い出す光景があります。

 春の彼岸の休日は、家族4人で母のお墓参りに出かけます。大阪の南部、泉南の小高い山にある墓地は日当たりも良く、彼岸の終盤には満開に近い日もあり、お花見気分も味わえ、家族サービスを兼ねた一日が送れます。

 山の中腹に位置する母の墓へ行くのには、長い階段を上らなくてはなりません。息子2人と手を繋ぎながら階段を上る時間も、楽しみの一つでした。下の子供が小学生になった頃から、階段を上ることが嫌になり始め、「しんどいよ」とぶつぶつ言っては下を向きます。

 「じゃあ、グリコしよう」と私が提案すると、長男も「やりたい!」と賛同し、妻と4人で階段ジャンケンをすることになりました。「パパ、何か罰ゲーム考えてやろうよ」と、長男の提案に「それでは、最下位の人はジュースをおごることにしよう」とルールを決めてスタートします。

 幼い2人はムキになって真剣です。でも必ず、妻が負けるように、終盤はグーばかり出します。他愛もないグリコがなぜか楽しく、ゲーム後のジュースの甘さを増してくれました。

 こんな光景は次男が高校生に上がるまで続き、手前味噌(みそ)ですが、仲の良い家族だなと実感していました。きっとお墓の下の母も喜んでいるだろうな、と心の中でしんみりしたものです。

 この親孝行と家族の親睦(しんぼく)を兼ねたお彼岸のお参りに、階段ジャンケンという名のイベントが加わり、年2回の行事が思い出深いものになっていきました。

 3年前、大学院の長男と大学生の次男が同時に就職し家を出て行き、妻と2人の墓参りになりましたが、階段を上るたび、ジャンケンの話題になります。今年も桜の季節、幼かった息子たちを思い出しながら、妻と2人で階段を上ります。

小野 英樹(56) 和歌山市

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