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【夕焼けエッセー】野風増

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 昨年2月に結婚し、妻と義父母に義妹と猫2匹と一緒に暮らしている。いわゆる“マスオさん”状態である。義父母と義妹は大変優しく、あれこれと細かなことまで気遣いをしてくださり、夫婦げんかのときにはフォローもしてくださる。

 そのような生活の中、妻が1月に元気な男の子を産んだ。私も出産に立ち会い、わが子が生まれ出てきたときには、感動のあまり目に涙があふれた。

 数日後、病院から妻と子が家に帰り、義父母と義妹がお祝いの席をもうけてくれた。

 「この子が二十歳になるまで元気でいて一緒にお酒を飲まないとね」と義母が義父に話しかけ、義父は笑いながら「生きてられるかなあ」と応えた。

 話の流れで河島英五の「野風増」の話が出てきた。今は亡き実父は河島英五のファンで「酒と泪(なみだ)と男と女」「時代おくれ」などとともに「野風増」の歌も好きであった。

 私が二十歳になったころ、酒が大好きだった父が「酒を飲みに行こう」と誘ってくれたが、仕事の忙しさや煩わしさもあり、いつも断っていた。それでも父は何度も誘ってきた。結局、父と酒を飲み交わすことはなく、父は亡くなってしまった。

 それ以来、「野風増」の歌を聴くたびに父のことを思い出す。あのとき、父と酒を飲み交わしておけばよかった、と。何という親不孝者か、と今でも悔やんでいる。

 お祝いの席がお開きとなり、わが子を抱きながら、きっと父は、私と酒を飲むことを楽しみにしていたのだろう、と思いをはせた。

 それ以来、「野風増」のあの歌詞の通り、酒場で2人、いや、義父と3人で焼酎をロックで飲む、20年後のその日を夢に見ながら、子守歌代わりに「野風増」の歌詞を口ずさんでいる。

川渕友樹(29) 団体職員 大阪府岸和田市

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