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【夕焼けエッセー・3月月間賞】和歌山県白浜町の松場千鶴子さん(71)「冬の蝶」…「蝶と孫の姿が重なり」

夕焼けエッセー3月月間賞の松場千鶴子さん
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 「夕焼けエッセー」の3月月間賞は、和歌山県白浜町の松場千鶴子さん(71)の「冬の蝶」(12日掲載)に決まった。年末に玄関の壁で見つけた青虫が、家の中でさなぎから白い蝶へと姿を変えるまでを見守り、その様子を丁寧に描いた。選考委員は作家の眉村卓さん、玉岡かおるさん、丸橋茂幸・産経新聞文化部長。

 松場さんの話「受賞は本当に驚きです。日記は長くつけていますが、エッセーは初めて。寒い中生まれてきた蝶がとてもかれんでかわいく、文章に表したくなりました。エッセーにも登場する孫は、おとなしくて口数の少ない男の子。何かあってもあまり口にしないので、羽ばたきもせずじっと耐えていた蝶の姿となんとなく重なりました。蝶のように、環境の変化に耐えながらうまく新しい学校に慣れてほしいと思います」

「冬の蝶」

 12月20日、友人が葉っぱのついた大根を届けてくれた。

 少しの間、玄関に置き、台所へ運び込んだ。翌日の夕方、帰宅すると玄関の壁に青い物がついていた。大根の葉っぱかなと思い、よく見ると、一匹の青虫だった。寒空の下、大根で育っていたのだ。

 新年を迎える掃除もしたいが、外は寒かろうと思案の末、そのまま見守ることにした。

 彼女(青虫)は、力を振り絞り壁を上り、天井へたどり着き、じっと動かなくなった。やがて色が変わって行き、薄茶色のさなぎになった。

 暖かい季節なら、何日くらいで羽化するのだろうか。節分が過ぎても何の変化もなく、きっと駄目だったのだと諦めていた。そして、彼女の存在も忘れていた。

 いつもより少し暖かかった2月10日、玄関を開けると、彼女は約40日かかって可憐(かれん)な白い蝶になっていた。羽ばたきもせず、自分のおかれた境遇にじっと耐えていた。

 いきなり、外へ放しても北風にもてあそばれるだけだと思い、少し様子を見ることにした。

 雪も舞う今冬、白い蝶が舞い降りてくれ、私の上に一足早い春が来たようで、きっといいことが、と心が温かくなった。

 快晴で風もない日、庭の菜園に植えている菜花にそっと放ち、春に専門学校へ行くため家を離れる孫の旅立ちと重ね合わせ、無事を祈った。

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