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【夕焼けエッセー】さようなら 三江線

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【夕焼けエッセー】
さようなら 三江線

 一級河川の江川に寄りそい山すそを縫って走る三江(さんこう)線がこの3月をもって廃線となった。広島の三次(みよし)から日本海の江津(ごうつ)まで全長108キロを四季折々の美しい風景を映しながら楽しませてくれる線である。

 沿線の人口はどんどん減少していき過疎の歯止めはできませんでした。

 廃線と決まってからは旅行者で満員となっているが、ここにくるまでは町内会の集いを車両を借り切って行ったり、ある時は故郷を離れた人たちを呼び寄せて貸し切りの臨時便で同窓会を催した。でもいずれも焼け石に水である。

 私も遠い昔、出征する兄二人を駅で小旗を振って見送った。無事帰還したときにも家族で迎えに行き駅舎のかげで母が泣いているのを見た。その両親もこの沿線で眠っている。

 中学高校と6年間汽車通学をしてお世話になった線である。その当時はぎゅうぎゅうのすし詰め状態であった。ドアのないデッキに立って汽車すれすれに伸びている木の枝などにタッチして喜んでいた。簀(すの)子(こ)をしいたようなでこぼこした床の郵便車にも乗った。今考えるとうそのような通学であった。

 次はいつお墓参りができるか分からないが、先日両親のお墓に手を合わせてきた。

 ふる里の山は春を迎えていた。

 ありがとう 三江線

久保見(くぼみ)圭子(78)奈良市

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