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【井上章一の大阪まみれ】

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 今東光にも、『河内カルメン』(一九六五年)という一冊がある。カルメンのような女は河内にもいるという趣向の小説である。メリメは、文明化されていない世界へのロマンを、スペインに託していた。それと同じ構図を、今東光は河内に投影していたのだと、みなしうる。

 河内に近い大阪や関西では、これを河内の物語としてうけとめただろう。しかし、東京では、大阪のドラマとして受容したような気がする。首都圏では、大阪と河内のちがいがわからない。どちらもメリメにとってのスペインめいた野性的な地域だと、ひとしなみに認識した。そのため、下劣で助平という今東光の河内像も、大阪像と混同してしまったのではないか。

 作品の全盛期は、大阪から船場言葉がしりぞき、河内弁がひろがった時代である。大阪像の変容を、今東光作品があとおしした可能性は高いと思う。

 (国際日本文化研究センター教授)

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