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【夕焼けエッセー】てんてん怪獣

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【夕焼けエッセー】
てんてん怪獣

 てんてん怪獣の武器は2本の前歯。怒った時にガブリと噛(か)みつく。

 おばあちゃんは、段々と強くなっていく武器の威力が頼もしくてたまらない。

 アイタタ、アイタタ。少し角度のついた点々をうれしそうに見つめる。

 てんてん怪獣も楽しくて、さっきよりもう少し強くかむ。

 アイタタタ、アイタタタ。おばあちゃんは新しくついた点々を見て笑う。

 てんてん怪獣は、おばあちゃんの笑顔が見たくてもう一度噛む。

 アイタタタタ、アイタタタタ…。おばあちゃんの手の甲の赤紫色の点々が6個に増える。おばあちゃんは、その点々を愛(いと)おしそうに撫(な)でる。

 夕方、てんてん怪獣は、お母さんと駅みっつ分だけバスに乗ってパパの待つおうちに帰る。覚えたばかりの両手バイバイは全身でするのがてんてん怪獣流。出来るのが自慢なので何回もする。それがおばあちゃんにはさみしい合図。

 母親に抱かれてバスに乗った3秒後には、てんてん怪獣の記憶から、おばあちゃんを噛んだことも、バイバイしたこともぶっ飛ぶ。

 てんてん怪獣はバスが大好きだ。バスに乗るときのカードのピッの音が大好き。バスを降りる時のピンポンの赤い光を押すのも好きだ。

 てんてん怪獣とお母さんが乗ったバスをおばあちゃんはずっと見送っている。バスが見えなくなるとおばあちゃんはてんてん怪獣を本当の名前でそっと呼ぶ。

 「てんゆう、また おいでね」

 そして、手の甲にうっすら残った武器の跡を泣きそうな気分でそっと包み込む。

外薗 一恵(57) 大阪府豊中市

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