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【瀬戸内家族】桜 はかなさゆえに心にひびくもの 写真家・小池英文

桜は人の記憶と呼応して表情を変える
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 東京で満開の桜を見届けてのち、瀬戸内の島々に足を運んだ。

 見頃を過ぎているかと気を揉(も)んだが、予想に反して開花状況はどこも三分咲きほどだった。どうやら島の桜は本州よりも咲くのが少し遅いらしい。

 そういえば結婚前に妻からそんな話を聞いたことがあった。彼女とはインドで出会ったのだけれど、あれはカルカッタの露店でチャイを飲んでいる時だった。

 旅に出るために関西空港へ向かう途中、新幹線から見えた桜がとても美しかったの、と彼女はいった。瀬戸内の島の実家を離れる時は、つぼみがようやくほころび始めたばかりだったのにと。今年はもう桜を堪能することはできないだろう。その事実が彼女をひどく落胆させたようだった。と同時に、車窓を過(よぎ)ってゆく桜を眺めていると、これから日本を離れて長旅に出るという高揚感がこみ上げてきて、胸が締めつけられるような切なさを覚えたという。

 風景というのは不思議なものだ。人の心と呼応して、表情を瞬時に変えてしまう。写真は小豆島(香川県)の桜。初めは少し物足りなかったその眺めも、妻とのささやかな旅の記憶に照らされて、気づくとほら、こんなにも明るく輝いて見える

 こいけ・ひでふみ 写真家。東京生まれ。米国の高校卒業後、インドや瀬戸内などの作品を発表。今年1月、写真集「瀬戸内家族」(冬青社)を出版。ウエブサイトはhttp://www.koike.asia/

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