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【夕焼けエッセー】「通勤電車の人気者」

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 午前7時過ぎ。

 平日の朝の私はちょっとした人気者です。

 私に会いに来てくれる人達がいるのです。

 OL、大学生、サラリーマン。職種も性別も年齢もさまざま。

 朝の通勤電車。私は郊外の始発駅から座って通勤しているのですが、途中駅から乗車する乗客の皆さんは吊革を持ち、満員電車に揺られています。

 このまま大阪都心の終着駅まで乗車すれば値打ちがあるのでしょうが、私は20分ほどで乗り換えのために下車しなければいけません。

 それに気づいた皆さんが、私の前の吊革を目指して集まって来られるようになったのです。

 私が空けた席に座れば、終着駅までの30分間はぎゅうぎゅう詰めから解放されるのですから。

 だから、正確に言えば、私に会いに来てくれているのではなく、私が下車することを楽しみにして近づいてこられるのです。

 足元では、吊革争奪戦参加の戦士が数センチずつ靴を移動させたりしながら、私の真正面に陣地を広げる無言の戦いを繰り広げています。

 たまに仕事の都合で終着駅まで乗車する時は心苦しくて寝たふりをするのですが、いつもの乗換駅を発車後に薄目を開けると、吊革争奪戦の勝利者が悲しそうに私を見ていたり、ムッとしながら立っていたり。

 私自身も途中駅からいつもの人が乗って来られない朝は「あの人、病気かな?」と、名前も知らない戦士の体調を心配したりしています。

 もうすぐ春。通勤電車の顔ぶれも少し変わることでしょう。

 新年度はどんな人との出会いが待っているのかな。

木田 博信(54) 和歌山県橋本市

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