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【訃報】石牟礼道子さん 水俣の慟哭「書かずには死なれんと思った」

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【訃報】
石牟礼道子さん 水俣の慟哭「書かずには死なれんと思った」

死去した石牟礼道子さん 死去した石牟礼道子さん

 「書かずにはいられんかった」。10日死去した作家、石牟礼道子さんは、代表作「苦海浄土(くがいじょうど)」で、水俣病に苦しみ、言葉までも奪われた患者たちの思いを、丁寧に拾い上げていった。

 熊本県河浦町(現天草市)で生まれて間もなく水俣市に移り住んだ。戦後、国民学校の代用教員を退職して結婚。家事や子育ての傍ら執筆活動を始めた。

 化学工業メーカー、チッソが、有機水銀を含んだ工場廃液を垂れ流し、汚染された魚介類を食べた住民らに、手足のしびれや視野狭窄(しやきょうさく)など神経系疾患が生じた水俣病。元の体に戻せと泣き叫ぶ女性、生まれながらに歩くことも言葉を発することもできず、目で語りかけてくる無垢(むく)な少年。高度経済成長期の犠牲者ともいえる患者らの慟哭(どうこく)を土地の方言で克明に書き表し、水俣病患者の全貌を世に知らしめ大きな衝撃を与えた。

 「この苦しみを私たちが背負っていきますから。女性患者の言葉がわすれられなかった」。昨年6月に取材した際、パーキンソン病が進行していたが、震えながらもゆっくりと振り返っていた。「これを書かずには死なれんと思った」。絞り出すように語った。(横山由紀子)

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