産経WEST

【井上章一の大阪まみれ】大塩平八郎にも延命譚

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【井上章一の大阪まみれ】
大塩平八郎にも延命譚

 大阪の陣には、キリシタンが豊臣秀頼側に、おおぜい加勢した。その代表格は、ジョアン明石掃部(かもん)である。そして、この明石掃部にも、不死伝説がある。夏の陣では死なずに、にげのびたと、しばしば語られてきた。

 『耶蘇天誅記』という江戸時代の文献は、その脱出経路をこうしるす。京橋口から船にのり、長崎へたどりついた。その後は、キリスト教徒だったので、南蛮国へ遁走(とんそう)している、と。東南アジア、もしくはヨーロッパまでにげたという。想像上の逃走先が地球の裏側までとどいた、最初の人物である。

 大阪の陣から二百年以上下った、一八二七年のことであった。大阪で、キリスト教徒だとみなされた者たちが、捕縛されている。そのうち六人は、市中をひきまわされ、磔刑(たっけい)となった。大阪切支丹一件とよばれる事件である。

 彼らは、キリスト教を論じた漢籍などから、信仰心をめざめさせていた。宣教師とは、まったくであっていない。もっぱら、文献をとおして、キリスト教には近づいている。

 しかし、同時代の人びとは、彼らを潜伏キリシタンの末裔(まつえい)だと、誤解した。夏の陣で大阪城からにげたキリシタンたちが、信仰をかくし大阪市中にひそんでいる。その子孫が、信心をたもった状態で、見つかったのだ、と。あたかも、長崎でしばしば発見されたかくれキリシタンのように。

続きを読む

「産経WEST」のランキング