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九州北部豪雨半年 「まだ現実を体が受け止められない」家族3人失った男性慟哭

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九州北部豪雨半年 「まだ現実を体が受け止められない」家族3人失った男性慟哭

ナシ畑で作業する渕上洋さん。家族3人を九州北部の豪雨で失った=福岡県朝倉市 ナシ畑で作業する渕上洋さん。家族3人を九州北部の豪雨で失った=福岡県朝倉市

 昨年7月の九州北部の豪雨で、福岡県朝倉市の農業渕上洋さん(66)は、妻(63)と出産間近だった一人娘(26)、1歳の孫の3人を一度に奪われた。「まだ信じられない」。思い出すと胸をかきむしられるような気分になる。豪雨から5日で半年。大切な家族を失った悲しみは変わらない。

 朝倉市を記録的な豪雨が襲った昨年7月5日、山あいの自宅は大量の土砂や流木にのみ込まれた。妻麗子さん、同月中旬に出産を控えていた長女、江藤由香理さん、由香理さんの長男、友哉ちゃんは家の下敷きになって見つかった。由香理さんは友哉ちゃんをかばうように抱きかかえていた。

 渕上さんは数キロ離れたナシ畑にいて無事だった。「家にいたら、助けられただろうか」。今も自分に問い掛ける。

 農作業や区長の仕事に没頭し、3人のことをあえて考えないようにしてきた。「何も手に付かなくなる。まだ現実を体が受け止められない」。遺影に手を合わせるのは数週間に一度だけだ。

 被災後、母公子さん(89)と「みなし仮設住宅」に避難した。公子さんの存在が自分を支えている。体が不自由な公子さんを気遣い、親族も家事を手伝いに来てくれる。

 昨年10月、天皇、皇后両陛下が朝倉市を訪問された。渕上さんは「自分の心が何か変われば」と思い、市からの面会の打診を了承した。

 家族を亡くしたことや母と暮らす現状を伝えると、励まされた。「会って心境が大きく変わったかは分からない。でも少し和らいだ気がする」

 仮設を出た後は家を新築して公子さんと住みたいと考えている。「諦めたらゼロ、何でもいいから前に進まないと」。由香理さんがくじけそうになったときにいつも掛けていた言葉を、自分に言い聞かせる。

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